GENELECスピーカー8020Bのモニターレビュー
アジャイルメディア・ネットワーク経由で GENELEC 8020B バイアンプ・モニタリング・システムというスピーカーを1週間ほどお貸しいただきモニターレビューをさせていただく機会を得ました。
単なるスピーカーであればモニターに応募しなかったのですが、応募要項に書かれていた謳い文句が非常に気になったので応募した次第です。実のところをお話しすると、大変失礼かも知れませんが、世界最高峰と書かれている割には初めて聴くメーカー名でした。まぁ僕が単に知らないだけで、世界最高峰という音は是非とも聞いてみたいっ!!と思っておりましたのでお貸しいただく機会を得て本当に嬉しい限りです。
世界中で愛され続けているモニタースピーカーブランド「GENELEC」
この度、その世界最高峰の音質を体感して頂ける機会が訪れました!北欧フィンランドの空気さえも感じれるような至高の音世界に是非とも触れてください。
<GENELECとは>
サンタクロースとムーミンで有名な北欧フィンランドに1978年に誕生したGENELEC社は、今では一般的になったスピーカーと電源とパワーアンプをひとつにしたアクティブスピーカーを世界でいち早く実用化したスピーカーブランドです。その音質は、音楽クリエイターや DJ,サウンドエンジニアを始めとしたプロオーディオの世界でアクティブスピーカーの代名詞的ブランドとなり、近年ではそのラインナップの豊富さからホームシアター用途やPC / TVスピーカー、携帯音楽プレーヤーの外付けスピーカーとして世界中の方々に愛されるブランドとなりました。
謳い文句はさておき、レビューはいつもどおり僕の主観で思った通りに書いていきます!!
まずは視聴する環境から説明します。
そもそもこのスピーカーはモニタリング・システムって言うくらいなので、まさにレコーディングスタジオなどでモニタリング作業を行う用途を想定しているため、いわゆる原音忠実性を前面に押し出した作りになっているはずです。そんなわけで PC の歪んだ音なんかで聴きたくないという思いからピュアオーディオに繋ぐことにしました。
アンプ | SANSUI AU-α907 NRA |
CD Player | PIONEER PD-D9 |
スピーカー1 | GENELEC 8020B バイアンプ・モニタリング・システム |
スピーカー2 | audio physic Brilon 1.0SLE (ブリロン 1.0SLE) |
せっかくなので全く趣向がブリロンとの聴き比べをすることにします。
ちなみにブリロンは違う音の指向性と独特の空間表現をもったスピーカーなのでモニタリングとは方向性が違います。本当は周波数特性とか数値としてみることができるスペックの比較もしたかったのですが、ブリロンは今となっては過去の機種なのでスペック表が存在しないので数値としてのスペック比較は断念します。
音を比較する前に GENELEC 8020B の特徴や設計思想について書いていきます。
音楽を楽しく聴くという観点で設計されたハイファイスピーカーでは、それぞれが特徴のある音を奏でるように設計されます。一方の GENELEC 社のスピーカーは、ただひたすらにモニタリングシステムに特化した設計を貫き通している点が、非常に特徴的だと言えるでしょう。
GENELEC 社の設計思想
今回借用したのは 8020B ですが、驚くべき事に全てのモデルが同じ性能を維持するような設計になっているとのことです。他のモデルと聞き比べてみたいところです。個人的には、もし本当に同じ性能であるならば、お家の事情もあることから、できる限り省スペースのスピーカーを選択したいところです。
- すべてのモデルは同じニュートラルな音特性を共有する
- モニターはつねに、アンプとクロスオーバー回路とスピーカー・キャビネットからなる調整済みのシステム一式として納品される
- 各スピーカー・ドライブ・ユニットは専用にマッチングされたアンプリファイア・チャンネルによって駆動される
- アンプとそれに対応するドライブ・ユニットとはパッシブ・クロスオーバー歪を回避すべく直接カップリングされる
- アクティブ・クロスオーバー・ユニットは低信号レベルで機能し、システムではパワー・アンプの前に組み込まれる
- クロスオーバーの増幅と位相応答は高精度なシステム・パフォーマンスを達成すべく個々の各モデル用に最適化される
- すべてのシステムは、システムの音声出力を最大限に保ちつつ信頼性の高い動作を得るべくドライブ・ユニット保護回路を備える
- すべてのシステムは多機能なルーム・レスポンス・コントロールを備える
- 音響性能は DCW™(Directivity Control Waveguide)を用いてオン・アクシスならびにオフ・アクシスでの聴取の両方に最適化される
DCW™ テクノロジーの特長
- DCW™ テクノロジーはドライバー・ユニットの能率を最大で 6 dB 改善し、システムの歪を減少させつつ音圧を上げる効果があります。
- 壁の反射を含めた周波数特性の変化を最小限に抑え、音響軸に対して広範囲なリスニング・エリアを提供
- 間接的な反射音を低減し、スピーカーから放射される直接音の比率を向上
- ステレオ・イメージの改善
- ドライバー・ユニットの能率向上
- システムの音圧レベル向上
- ドライバー・ユニットの歪を低減
- キャビネット・エッジでの回折を低減
- 音響歪の低減
スペック表
仕様 | ||
入力フォーマット | アナログ | |
音圧レベル | ||
定格音圧(100 Hz 〜 3 kHz) | ≥ 95 dB SPL | |
ミュージック・パワー | ≥ 105 dB SPL @ 1 m | |
ドライバー | ||
低域 | 105 mm(4") | |
高域 | 19 mm(3/4")メタル・ドーム | |
クロスオーバー周波数 | 3 kHz | |
周波数特性(フリーフィールド) | 66 〜 20 kHz(± 2.5 dB) | |
アンプ出力 /ch | ||
低域 | 20 W | |
高域 | 20 W | |
外形寸法(H × W × D) | 226 × 151 × 142 mm (Iso-Pod™ 使用時高さ 242 mm) |
|
重量 | 3.7 kg |
そして何より特徴なのが周波数特性。ご覧の通りほぼフラットな状態です。2ch 試聴の場合は 30 度でのリスニングの特性を参考にするとよいでしょう。まさにモニタリング向けな特性です。
独自のチューブ設計
個人的に最も気になっているのはスピーカー内部のチューブの設計です。仕様書の pdf の説明によると、このチューブにより歪みを極力抑えつつ優れた低音を生み出すそうですが、どこかで見たことがあると思ったら、BOSE のアコースティック・ウェーブガイド・テクノロジーに基本的な考え方は似ていると思いました。
スピーカーの設置方法
一般的なスピーカーの設置方法です。音が集約される位置に座ってリスニングするスタイルです。モニタリングシステムであるがゆえに、ここら辺の音響設計はシビアなんだと思います。一方で DCW™ テクノロジーの特長として音響軸に対して広範囲なリスニングエリアが提供されるはずなので、敢えて理想の配置からずらした音の響き方も聴いてみたいと思います。
さて、随分と前置きの説明が長くなってしまいました。いよいよ届いた 8020B を設置してみます。いきなりですが少々不便を感じたのが電源ケーブルです。このスピーカーはアンプ内蔵型なので電源を繋ぐ必要があります。しかも各スピーカーが独立電源であるため、電源ケーブルを二本接続することになります。今回はしっかりしたオーディオ用の電源を確保することができなかったので、家庭用コネクタに普通に差し込むこととしました。
届いたモニター機はイロイロと使い回した形跡があるので、ある意味エージング済みと言える状態でした。ドキドキしながら音楽を試聴してみました。ちょうど娘用に出してあった AKB48 と水樹奈々の CD を鳴らしてみました。
むむむむっっっ!!!
正直言って良い意味で期待を裏切ってくれました。ブリロンの方が遙かによい音をならすに決まっていると高をくくっていたのですが、ブリロンよりも遙かに透明度の高い音が出てきちゃいました。 ( ̄□ ̄;)!!
第一印象は低音の出方は BOSE の音に傾向が似ているかも・・・そして中高音域の出方はインナーイヤーの ER シリーズに傾向が似てるかも・・・って印象でした。構造も若干似ているので予想はしていたのですが、凄くしっかりした低音を奏でます。まるでウーファーが置かれたかのような音がします。しかも謳い文句通り歪みが少なく低音から高音まで全ての音が明瞭です。今まで聴いていたブリロンの音が障子を隔てて聴いているような感覚に陥りました。
ただこの音をリスニングしていたいかというと、それは違います。モニタリングとして音なので聴いていて楽しい音かというと微妙です。音は確かにクリアで明瞭で解像度も高いのですが、耳に刺さるような鋭さを持った音なので耳が疲れました。もう一つ気になったのが、音場が思ったよりも狭いことです。イメージとしてはモニタ用のヘッドフォンで聴いているような音ってのが近いです。
モニタ用なので仕方がないのですが、この音に空間表現と暖かみが加わるのならば、ブリロンと交換しても良いくらいだと感じました。
そして最後に最も難しいと感じたのが、左右別々に用意された音量調節です。もともとこのスピーカーは2台で1セットというわけでもなさそうなので、単にアンプスピーカーを2つ使えばステレオになるよって仕様です。なので音調調節も左右別々に行うのですが、僅かにでも音量が違うと音場が崩れてしまう難しさがありました。旨いことぴったりあわせないと、リスニングポイントを決めても音がヘンに聞こえてしまいました。アナログ形式の音量調節に、カチカチ止まるような刻みポイントを付けてくれれば、結構使いやすくなるのになぁ〜と思いました。
ただ痛切に感じたのは時代の進歩とともに音はもの凄く進化していることです。僕のピュアオーディオ環境は、スピーカーもアンプも年代物です。当然ながら経過劣化もしてるので音も劣化してるはずです。個人的には好きだけどクソ重たいサンスイのアンプとブリロンのセットよりも遙かにキビキビした音が、こんな小さなスピーカー単体からでてくることに驚愕しました。
モニター期間は僅かに1週間ですが、この三連休は 8082B が奏でる解像度を楽しみたいと思います。世界最高峰かどうかはわかりませんが、確かに音はホンモノでした。
そうそう書き忘れるところでしたが、リスニングポイントは思ったよりもシビアでした。
-- 追記 --
その後もいろいろ CD や SACD を聴いてみましたが、ウーファー並みに迫力のある重低音があるので、ホームシアターとしての音の方が相性がよいことに気がつきました。つまり音を聞くと言うよりも 5.1ch のように臨場感を味わう音の方が相性が良いと思います。そう言う意味だと、PC ゲームの音とかも相性が良いかと思います。意外とテレビとの相性も良く、地デジの音声出力先のスピーカーとして使うと、随分と迫力のあるテレビ視聴を楽しむことができました。
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